ある日の休日

久しぶりの休暇である。
仲間たちは思い思いに町へ出て、自分のしたいことをしているのだが。
この男には、これといってしたいことも無いのだった。

一人部屋に残っている睡骨は、窓の外にある賑やかな町の様子を眺めながら息をついた。
何をしよう。
煉骨や霧骨は必要な材料を買いに行っているし、蛮骨と蛇骨も出かけている。
凶骨たちでさえ、何かしらをしに町へ出ている。
だが、自分はどうだろう。
せっかくの休日だというのに、一人で部屋でぼーっとしている。
別に金が無いわけではない。
煉骨や霧骨に比べたら消費は少ないのだから、しようと思えば何でもできる。
だが、したいことも思い浮かばないでいる。
こういう暇な時なら、医者が出てきても邪魔ではないのだが、そう都合よく出てくるものでもなかった。
(ったく不便な野郎だ…いらねえ時は出てくるくせによぉ)
ただこうして一日を終わらせるのも、なんだか勿体無い。
とりあえず酒でも飲みに行ってみようか。外に出たら他にも目的が見つかるかもしれない。
そう考え、睡骨はのろのろと立ち上がった。
部屋を出るべく障子戸に手をかけた時。
勢いよく、向こうから戸が開けられた。
「……!」
睡骨は驚いて一歩身をひく。
障子を開けてずかずかと部屋に入ってきたのは、蛇骨だった。
「どうしたんだお前、大兄貴と出かけてたんじゃ…」
話しかけると、ギロリと睨まれた。随分と不機嫌な様子だ。
「うっせーな!!てめえこそ、まだ部屋ン中にいたのかよ。この引きこもり野郎!!!」
「ひ……」
あまりの言われように、睡骨は一瞬言葉を失う。
「だ、誰が引きこもりだってんだ!!好きでここにいるワケじゃねえ!!」
今まさに、出かけようと思っていたところなのに。
「酒飲みに行ってくる。そこをどけ」
入り口に立っている蛇骨を退けて、外に出ようとしたが、蛇骨にぐいと腕を引っ張られた。
胡乱げに振り返ると、彼はにやりと笑ってひょいと徳利を出してみせた。
「酒ならここにあるぜ。しょーがねえ、どうせ暇になったんだし、お前に付き合ってやらぁ」
「いや、誰もそんなことは…」
頼んでない、と言いかけたが、無理やり部屋に戻されてしまった。
胡坐をかいた蛇骨は、酒をついだ杯を睡骨に差し出す。
渋々ながらもそれを受け取り、睡骨はそれを一口飲んだ。
「で、何でこんなに早く帰ってきたんだ?」
訊くと、蛇骨は深い深いため息をついた。
「初めは大兄貴と一緒に町を歩いてたんだ。でもよ、大兄貴の行くとこ行くとこで女どもが群がってきてよぉ。
もうなんか、すっげー気分悪くなって」
女のにおいに耐えられなくなり、とうとう蛮骨を置いて帰ってきたのだと言う。
気の毒な首領を思い浮かべながら、睡骨は黙って話を聞いていた。
「しばらくは一人でぶらぶらしてたんだけど、暇になってきてな。酒買って帰ってきたのさ」
言いながら蛇骨は、どんどん酒をあおっていく。
すぐに一瓶は空になり、蛇骨は脇からまた徳利を取り出した。
「おい、もっとゆっくり飲んだらどうだ」
「ああ?どう飲もうが俺の勝手だろ。俺が買った酒なんだからよ」
(ヤケ酒かよ…)
「大体よぉー、大兄貴も大兄貴だぜ。あいそ笑いなんかしやがるから向こうも付け上がるんだ」
酒を含んだ蛇骨の顔がどんどん赤くなっていく。
「女なんか、どこがいいんだよ…」
呻くと、蛇骨は徳利から直接酒をあおった。
睡骨が呆気にとられているうちに、グビグビと酒を飲み干し、空になった容器を放り投げる。
そして、ばったりと倒れた。
「お、おい蛇骨!?」
覘き込むと、彼は顔を真っ赤にして目を回している。
「何やってんだよ!だから一気に飲むなって…」
「う、うるせー…あ~気持ちわりぃ……」
蛇骨はうつ伏せになって這い進み、胡坐をかいた睡骨の膝に頭を乗せた。
「どけ、邪魔だ」
「ケチケチすんなよ~少し寝るだけだって……」
言葉が終わる頃には、すでに蛇骨は夢の世界へ旅立っていた。
規則正しい寝息が聞こえる。
退けようかとも思ったが、結局諦めてそのままにさせておく。
動けるようになったとしても、別段することもないのだから。
「ったく、勝手なやつだぜ…」
睡骨は傍にあった着物を蛇骨の上にかけると、壁にもたれて長く息をついた。
結局一日を無駄に終えてしまった。
「はぁ…ま、いいか」
苦笑を浮かべて、赤くなっていく空を眺めていた。

陽が暮れた頃、最初に蛮骨が戻ってきた。
どこか疲れた様子である。
部屋の戸を開けると、睡骨と目が合った。
「あれ、お前ら何してんの」
睡骨の膝枕で蛇骨が寝ている。
とっさに、怪しい想像が頭をよぎった。
蛮骨の表情からそれを読んだのか、あわてて首を振って否定する睡骨が、そこにいた。

<終>

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あとがき
りょくさんリクの、睡蛇小説。
え、こんなの睡蛇じゃないよって?うん、私もそう思います。
男CPリングは向かないみたいです。
でも、また機会があったら書きたいです(^^)
りょくさん、リクありがとうございました!

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