「睡骨いるか?」

医者に戻っているため留守番をしていた睡骨の姿を探し、部屋に入ってくる者がいた。

最年少にして七人隊首領。蛮骨。

蛮骨の呼びかけに顔を上げたその男は、もちろん睡骨だ。

「ちょっとした切り傷なんだけどな、蛇骨のやつがうるさいから、一応包帯だけしといてくれよ。」

「・・・どこを切ったんですか?」

蛮骨が睡骨に背を向けてしゃがみこみ、青い模様の上に真っ赤な鮮血の滲んだ着物を緩めて傷を見せる。

睡骨はそれを見て思わず顔を歪める。

血・・・。何年医者をやっても、もう1人の自分と生きていても決して慣れることはない。

血は、体が傷つけられた箇所から、その傷口を隠すように溢れ出す。

蛮骨の背中には、見たところ深くはないが、長い刀傷があった。

戦であるにしても、この男がいったいどんな状況で後ろから攻撃されたのかなど医者には想像もできなかったが、
刀傷の理由には一切触れぬことにして、手当てを始める。

応急処置というにもお粗末な感じだったが、ある程度止血はしてあった。

”ちょっとした”切り傷という表現からも伺えるように、ほっとけば治るという考え方なのだろう。

消毒だ薬草だと忙しく手を動かしながら、ふと睡骨は気付く。

刀傷がついているからだろうか?彼の背が私よりも小さいからだろうか?

いや、そういうものじゃなくて。

彼に逆らってはいけないと本能的に悟らせる彼の背中が。

彼について行く事に一欠片の疑問も残させない彼の背中が。

そして、安心感さえも与えてくれる彼の背中が。

なんだろう。彼の背中が普段と違って見える。

私は黙ったまま、彼の背に血が滲むのを見ていた。

この背中が今まで背負ってきた、他の仲間には知りえない何か。

絶えず体からにじみ出てくるそれは、傷つけられた部分から僅かに覗いたなにかを私の視線から彼をかばう。

今、真っ赤な血液が傷口から背中の緩やかな流れに沿って、一筋の赤い線を引いた。

しかし私の目には触れてしまった。

彼の血を。涙を。苦しみを。痛みを。恐れを。怒りを。

真っ赤に傷口を隠す、血。

傷つけられたその刹那。

垣間見た「彼」を、私は忘れない。
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<終>

うわああぁ~い!!
りょくさんから1234番でキリリクしてた小説、いただきました!
りょくさん無理言ってすみませんでした~;;
素敵イラストまでくださって、ありがとうございます(><)包帯大好きだぁー!

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