熱気と独特の臭気が立ち込める塚の底で、奈落は静かに立ち上がった。
足元には、全身を痙攣させた七人隊首領がうつぶせの状態で横たわっている。
身体の下に広がる白濁と粘液の海の中、いまだに一本の触手が肉棒を弄りまわし、もはや押し留められることもなくなった薄い精液が、作り出されたそばから垂れ流れていた。
海の中には大小六つのされこうべが浸かり、その全てが一対の洞で、時折びくりと大きく震える己たちの首領を言葉無く見つめている。
蛮骨に絡みついていた最後の触手を、奈落は静かに体内へ戻した。
このまま触手だけを残していつまでも責め立てることは可能だが、ひとまず死人の耐久力については概ね把握できた。
これ以上は時間の無駄なので、さっさと当初の目的に取り掛からせるべきだろう。
倒れ伏した蛮骨の腹下に爪先をかけて仰向けると、わずかに開いた双眸が奈落を捉えた。
「ほう、かろうじて意識を繋いでいたか」
蛮骨の口が小さく開閉し、「欠片をよこせ」と、ようやく聞き取れる声で切れ切れに紡いだ。
「しぶとい男だ」
手始めに、逆らう気も失せるほど矜持を叩き折ってやるつもりだったが、どうやらまだ完全には砕けていないらしい。
こちらの命令に従いはするだろうが、琥珀のように従順な犬とはならないだろう。
くく、と低い笑みが漏れる。
この分ならば欠片の力で強化された肉体は無論のこと、精神もそう易々と折れはするまい。
犬夜叉たちの足止めに少しは役立つだろうと、奈落の唇が薄い弧を描く。
懐から欠片を取り出すと、蛮骨の右手の上に放った。
数は六つ。
それを見届けると、糸が切れたように蛮骨の瞼が落ちる。今度こそ完全に意識を失っていた。
しばらく放っておけば欠片の力で回復し、動けるようになるだろう。
「短い命、せいぜい足掻いてみせるがいい」
聞く者のない言葉の反響が止んだ時には、七人塚の底の闇からひとつの気配がかき消えていた。

<終>


1

◆あとがき◆

「もし蛮骨を復活させたとき奈落が全員分の欠片をくれなかったら」。略して「もしナラ」。
……。
二作目となる成人向け、お付き合い頂きありがとうございました。
ここまで辿り着いたあなたも結構な……あ、いえ、皆まで言わなくて良いのです。とりあえず固く握手を交わしましょう。お叱りは後で受けます。
一作目に続いて糖分ゼロ、ドSまっしぐらな内容になりました。私も自分の性癖について不安を感じていますよちゃんと。
されこうべの登場順については、読まれた方それぞれの好みで妄想して頂ければと思いますので特に固定していません。贔屓の骨が真っ先にああなったと考えるも良し、知らないうちにああなったと考えるも良し。
こんなのでもどなたかの嗜好に刺さりましたら幸いです。
書いてみて初めて、触手を表す言葉が「触手」しか思いつかないという深刻なボキャ貧にぶち当たり、どう足掻いても「触手は~した」「触手が~している」という字面ばかりになってしまったので、触手A、触手Bと名前を付けられたらどんなに楽かと本気で考えました。触手、恐ろしい子…!
あ、タイトルの「移露」とは○液のことです。日本語って美しいですね。
ご感想や何やかやありましたら、Web拍手その他からお気軽に。地球上のどこかに同士がいることを願います…!

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