「っ!?」
右手が乳房を離れ、するすると下腹へ近づいていく。
下着のみを着用し大きく開かれたそこは、どう足掻いても隠すことが叶わない。
かごめは肉棒を咥えたまま必死の眼差しで蛮骨を見上げたが、彼の方はまるでこちらを見ていなかった。かごめが吐き気と戦いながら懸命に性器へ奉仕しているのを、あたかも微風程度にしか捉えていないと言わんばかりである。
下肢へ辿り着いた手はすぐには決定的な箇所へ触れてこず、手始めに白い大腿をなぞった。高く上げられた左の膝元から付け根へかけてゆっくり撫で下ろし、鼠蹊部そけいぶぎりぎりのところで引き返していく。
ぞわぞわと這い上る悪寒に耐え、かごめは口の中のものを一心に舐め続けた。頭を蛮骨に寄せてより深くまで咥え込み、舌を左右に動かして肉棒を転がす。
ふと気が付くと木々の間に響いていたはずの野鳥の鳴き声はいつの間にか消え失せ、風にさやぐ木の葉の音以外には、かごめが一物をしゃぶる水音がじゅぷじゅぷと響くばかりになっていた。
「うっ……」
自分の立てている下品極まりない音を改めて認識した途端、これまで意図して考えないようにしてきた雄の味と臭気が一気に鼻腔へ雪崩なだれ込んできて、大きな瞳に溜まっていた涙がぼろ、と零れ落ちた。
情けなさに目の奥がくらくらと歪む。わずかに意識が遠のいて舌の動きが弱まった瞬間、悠長に足を行き来していた蛮骨の手が開かれた股の中心部へぴたりと被せられた。
「んんぅ!」
「なんだ、しっかり濡らしてやがる」
胸を覆っていたのと揃いの下着を撫でながら失笑じみたものを向けられる。
焦らすような触り方をされていたためか、はたまたつい今し方強烈に雄を感じたことによる本能的な反応か、かごめの女の部分はすでに確かな湿り気を帯びてしまっていた。濡れた下着を中央の亀裂に押し込むようにされ、それがかごめ自身にもはっきりと伝わる。
「こんなに嫌がっても女のさがってのはなぁ……。それとも、しゃぶりついてるうちに満更でも無くなってきたか?」
からかいの言を否定しようにも口中は塞がっており、かごめは悔しげに顔を歪めて蛮骨を睨み上げた。
蛮骨の右手が臍の方へ移動した。ささやかな刺繍の装飾があしらわれた下着の入口を軽く持ち上げ、布と肌の狭間はざまへ音もなく滑り込む。かごめが大きく目を見開き、くぐもった悲鳴を上げる。
侵入してきた手は無遠慮に下腹を這いまわり、時を経ず柔らかな花弁へ毒牙をかけた。
「ん…っ!」
しっとりと潤った花園へ直に触れた指がひだを巻き込むように前後へ擦り上げる。その動きに合わせて下着が盛り上がり、いやに静かな森の中へ卑猥な水音が響く。
しばらくぐちぐちと秘所をまさぐっていた蛮骨だが、やがて下着から手を抜くと、片手で左右の細い部分を掴んで腹側へ引き上げた。薄い布地が絞られて亀裂へきつく食い込み、かごめが痛みで顔を歪める。
なおも力任せに持ち上げると、限界まで伸ばされた下着はぶちっと断裂音を立てて引きちぎれた。
「うぅっ!!」
秘部を隠す唯一の砦だった肌着は、蛮骨の手からぶら下がるぼろぼろの一枚布になり果てた。色が変わるほど濡れそぼったそれを目の前に広げられる。
言葉を失ったかごめは、もはやなりふり構っていられなくなり口内の雄に強く舌を絡ませた。これ以上のはずかしめを受けたくない一心で、口をすぼめてがむしゃらに吸い立てる。
「ひぁっ!?」
花弁への侵略を再開し蜜壺の入り口をかき回していた蛮骨の指が、溝の先端にあるごく小さな突起をかすめた。そこに触れられた途端に今までとは異なる鋭い刺激が走り抜け、身体がびくっと引き攣る。
目聡めざとくそれを認めた蛮骨の口元が引き上がった。
「ここか? 自分で触ったことは?」
答えを聞かずとも分かっているような口調で問いかけながら身を潜めていた核を暴き出し、爪先でかりかりと引っかくように細かな刺激を与える。かごめの腰が自分でも信じられないほどにびくびくと連続して跳ねた。
「うぅっ……んんんっ」
そのごく小さな一点を集中的に攻められるだけで、痺れるような感覚がもたらされる。左手に乳房を、右手に股間を責め立てられ、全身へ絶えず電流を流されているかのように震えが止まらない。
蛮骨の手は武骨でいて、その動きは存外に繊細だった。剥き身にされた陰核が二本の指に挟まれ、ねじ切ろうとするかのように左右へ捻られると、たまらず背が大きく仰け反った。
「んん――っ!!」
にわかに右足の力が抜け、がくんと沈む身体を赤帯が吊り下げる。不安定な角度で宙をぶらぶらと揺れるかごめの軸足を、秘唇からの透明な滴がゆっくりと伝い落ちていく。
「はい、俺の勝ち」
当たり前のように言い、蛮骨は苦しげに息を継ぐかごめの口から自身を引き抜いた。
大量の唾液にまみれた蛮骨の肉棒は、最初よりは幾分ち上がっていたが、果てるまでには到底足りない。恥も体面もかなぐり捨てた決死の奉仕は何の実も結ばなかったのだ。
「無駄に時間かけてやってんだ、助かりてぇならもうちっと気合い入れろ。ま、最後の方は悪くなかったが」
蛮骨は小刻みに震える下肢を一瞥し、あざけるように鼻で笑った。
「敵に股座またぐら弄られてこんなになってるようじゃ、土台勝ち目はねえがな」
「ち、ちが……そんな…こと」
否定しかけた瞬間、頭頂部の髪を乱暴に掴まれて俯いた顔を上向かされる。はっとする間も無く、鼻筋から目頭にかけての窪みを辿るように肉棒が擦り付けられた。その下のふくろまでも遠慮なく口元に張り付いてきて、生理的な嫌悪感から叫び出しそうになる。
「んっ…んぶっ……」
「正直、さっきのじゃ明日までかかっても無理だぞ。どうやるもんか教えてやるから喉開いとけ」
言うが早いか、肉棒が勢いよく口内に捻じ込まれた。
「ぉごっ!」
左右から頭を押さえられ、容赦なく前後へ振り立てられる。かごめが自発的に動いていた速度など全く比較にならなかった。
「がぼっ……ごぶっ…!」
がつがつと揺さぶられる首が痛み、顎が外れるかと思うほどに口を大きく開かされ、根元まで突き込まれる。呼吸を確保するのが精いっぱいで、噛み付く余裕もない。
口内を埋め尽くす肉茎はみるみるうちに質量を増していく。
一際奥深くまで咥え込まされ、びくびくと痙攣する喉奥の締め付けを堪能するかのように抽送が静まった。
そのまま口に出されるのだと睫毛まつげを震わせたが、予想に反して蛮骨は放出を迎えぬままかごめの口から自身を抜き放った。ずる、と半透明の太い糸を引いて肉棒が離れていく。
「はっ…ごほっ……」
塞がれていた喉にどっと空気が入り込み、かごめは激しく嗚咽しながら咳き込んだ。
「うあぁっ…」
子どものように声を上げて泣きじゃくる。口中に残る全てを吐き出したくて、何度も嘔吐えずく。
かごめの口を使って仕上げられた肉塊は、先とは別物のように肥大し硬くなっていた。血管がくっきりと浮き立ち、唾液でぬらぬらと光る亀頭は上を向いて反り上がっている。
「飲ませてやんのも一興だが、初っ端の一番濃いのははらん中に出してやらねえとな」
蛮骨が開かれた足の間へ移動した。わなわなと震えるかごめの足を支えると、秘部に亀頭を当てがう。
彼女はひっ、と息を呑み、激しく首を振った。
「やだ! やだやだ! れないで…!」
凹凸をひだに絡め、花弁の中心に押し付けてはいたずらに離れていく肉砲。蛮骨が気のままに腰を押し出すだけで、いつでも膣内へ侵入できてしまう状態だ。
「やっ、やめて…やめてよぉ……!」
大きくしゃくり上げて懇願し続けていると、小刻みに腰を擦りつけていた蛮骨の動きがふいに止まった。
「っ……?」
やめてくれるのかと、驚きと期待が入り混じった目でかごめは蛮骨を顧みる。しかし、対する彼の相貌には人の悪い笑みが刻まれていた。
「そんなに嫌なら、特別にもう一勝負してやろうか」
「え……あっ」
かごめが言葉の意味を咀嚼しきらぬうちに、蛮骨は片手を伸ばしていとも容易く彼女の手元から戒めを解いた。枝に渡されていた帯は片側のおもりを失い、残る左膝の側にしゅるりと引かれる。
長らく右足のみを軸に支えていた身体は予期せぬ解放に対応できず、大きく傾いで草むらの上に倒れ込んだ。
「っ……」
痛みに耐え、かごめは震えながら後退あとずさった。左膝に繋がれたままの帯を蛮骨が拾い上げている。結びを解かなければと思うのに、両手は小刻みに震えるばかりで力が入らない。
下半身は靴と靴下を残して丸裸にされてしまった。腰から下を隠そうと上衣の裾をできるだけ下へ伸ばすがまるで丈が足りず、足を擦り合わせるように身を縮めることしかできなかった。
「さて、勝負の件だが」
そう言って蛮骨が取り出して見せたのは、かごめのリュックに入っていたはずの白い蝋燭ろうそくだった。何の変哲もない、燃焼時間が一時間ほどのものである。
かごめが困惑する前で、蛮骨はそれをかなり上の箇所でぽきりと折った。芯の糸を千切って完全に二つに割る。
「この蝋燭が燃え尽きるまで、股にこいつを挿れずに終われたらお前の勝ちだ。膣内なかれるのは勘弁して、解放してやる。失敗したら、まあそのまま事に移らせてもらう」
短い方の蝋燭を掲げて見せ、それとは反対側の手で勃ち上がった自身をひと撫でする蛮骨に、かごめはますます困惑を深めた顔をした。
「俺からは挿れないぜ。あくまでお前が自分から、だ。簡単だろ」
「自分…から……」
小さく繰り返し、かごめの心はひどく揺らいだ。
かごめが達する前に蛮骨を射精させるという先の条件に比べると、達成はよほど安易に思われた。少なくとも彼の言うような、自分から秘所へ肉棒を挿れる状況など天地がひっくり返ってもあり得ない。もちろん、蛮骨が何の勝算もなくその条件を提示してきたとは思えないが。
「さあどうする。乗らねえってんなら、このまま突っ込んで膣内にぶちまけて、吊るしたまま捨てていくが」
俺はどっちでもいい、と蛮骨は目を細めてわずかに口端を上げる。
「……」
かごめは激しく逡巡した。おそらく自力で逃げ出すことは不可能だ。よしんば隙を突けたとしてもすぐにまた捕らえられるだろう。弓も弦が切れて使いものにならない。辞退すれば即時に犯される。
彼が約束を守ることが大前提となるが、最後の一線を回避する方法は他に浮かばなかった。
震える喉から声を絞り出し、かごめは勝負を受けると口にした。

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