蛮骨はかごめの手を今度は胸の前で一まとめに縛り、代わりに左膝の結びを解いた。そして数少ない己の持ち物から、円形状の何かを取り出した。
何度か目にした覚えがあるそれを、股が少しでも隠れるように足を擦り合わせながらかごめはじっと見つめる。
円形のものは一端が細く筒状に伸びており、そこから縄のようなものが長く伸びている。かごめの記憶が正しければ確か胴火というもので、出ている縄の方は火縄だ。
火縄は文字通り、火縄銃などに点火する際に用いる火種を維持しておくためのもので、胴火に入れればそれを効率よく携帯できるのだと、いつだったか説明を受けた覚えがあった。
蛮骨は円形の部分を蓋のようにかぱりと開け、中でくすぶる火縄に短くなった蝋燭の先を当てた。
じり、と微かな音がして蝋燭に火が灯り、昼間の野外ではほとんど目立たない微小な明かりが生まれる。
溶け出した蝋を適当に選んだ平らな小石へ垂らし、固まる前に蝋燭の底を密着させ固定する。風で勝手に消えぬよう、大きめの石や小枝などで簡易に周囲を取り囲んだ。
かごめは唇を引き結んで、ちろちろと揺れる炎を見据える。あれが燃え尽きるまで、蛮骨の一物を挿れなければ良い。折られた蝋燭の燃焼時間は現代の時間で恐らく十五分から二十分程度だろう。蛮骨がこうして準備を進めている間も燃え続けているので、残り時間はどんどん削れていく。
(大丈夫……)
己を勇気づけるように心中で呟いた刹那、準備を終えた蛮骨に手に結ばれた帯を引き寄せられた。
「さて、始めるか」
一つに括られた手を持ち上げられ、両腕でできた輪の中を蛮骨の頭がくぐる。
(っ……この、体勢)
側から見るとかごめが蛮骨の首に腕を回して抱きついているような形だった。
屈辱的だが、蛮骨の気が変わりすぐにも問答無用で犯される可能性を考えると、下手な事は言えない。
至近距離で向き合った蛮骨はかごめの身体を引き寄せながら地面に腰を下ろした。彼女もそれに伴って身体を下降させざるを得ない。
草の上に胡座あぐらをかいた蛮骨よりやや目線の高い位置で、かごめは下降を制止された。
「膝に力入れとけよ」
そう言って両足を自分の左右につかせ、腰だけを深く下げた姿勢をとらせる。
「う……」
かごめは顔を真っ赤にした。
座位の蛮骨を大股で跨ぎしゃがんでいる状態だ。本来秘されるべき下半身の性器を隠す術は無く、森を行く風が吹きさらしの陰部を撫でていく。これ以上なく恥ずかしい姿だった。
「じゃ、せいぜい頑張んな」
蛮骨はそう言ってかごめの尻をひとつ叩き、勝負の開始を告げた。
かごめは恐る恐る視線を下ろした。しゃがんでいる自分の真下に、天を向いてそびえる凶悪な屹立があるのを認めて目元が引き攣る。
他ならぬ自分の口で頬張っていたものだ。その大きさは改めて確かめずとも十分すぎるほどわかっている。
だが、ここで狼狽えるわけにはいかない。残り時間を考えれば、かごめの勝ち目は十分にあった。
(だ、大丈夫…このまま耐えれば良いだけ…。それで終わりよ……)
何度も胸中で繰り返し、かごめは意気込んで両足に力を入れた。
できるだけ下を見ないように、かつ目の前の男とは視線を合わせないように努めていると、自然と胸元に目が落ちる。そこで彼女は、己の胸の突起が芯を硬くして制服をつんと押し上げ、白い布越しに淡い色の乳輪が透けて見えているのに気付いてしまった。自分から見てこうなのだから、おそらく蛮骨からはより明瞭に見られている事だろう。
かっと耳が熱くなり、それを隠すように顔を背けていると、蛮骨の手がおもむろに上衣の裾にかかった。
はっとする間もなくたくし上げられ、豊かな乳房が外気にこぼれ落ちた。
「何するのよ…!」
白い乳房が木漏れ日の陰影に揺れる。両の先端を飾る桃色の突起は言い訳ができないほど硬く上向き、蛮骨の鼻先へ突き付けられている。
「挿れねえとは言ったが、触らねえとは言ってねえだろ」
蛮骨は目の前に弾け出た膨らみを至近距離で眺め、下から持ち上げるように掻き寄せた。谷間に鼻先を滑らせ、なだらかな柔肌に唇を這わせる。
「……や、だめ……」
かかる吐息にぞわぞわとしたものが這い上る。かごめは身を離そうとするが、蛮骨の首にまわった腕の拘束はびくともしない。彼はかごめを抱き寄せるとより深く胸に顔を埋め、肌に吸い付いた。
「中に突っ込まれるのに比べりゃ安いもんだろう」
そう言って片側の乳頭に食いつく。
「やあっ」
弄られ続けてこれ以上無いほど敏感になった乳首が熱を帯びたぬめりに包まれると、鳥肌が全身を駆け巡った。
むさぼるように舐め上げられ、手で捏ね回しながら音を立てて吸われる。かごめは身をよじり、薄く開いた目ですがるように蝋燭を見た。
――あと半分。
自分の認識よりも時間の進みが早い。不快なことに変わりはないが、この調子なら勝てるはずだ。
一方、こちらも蝋燭の長さをちらと確認した蛮骨は、頃合いを見計らったように胸を揉みしだいていた右手を彼女の背に回した。
背から腰に下りた手は剥き出しの尻を撫で、踏ん張っている腿の外側から内側にかけてをなぞり辿ると、己の肉茎をぎりぎりのところで跨いでいる秘部の中心に触れた。
かごめの肩がびくんと跳ねる。
柔らかな花弁をくにくにと弄り、しゃがんでいることで自然と開き気味になっている亀裂の谷を緩やかに擦る。水源は先にも増して潤っており、触れた指先を一瞬にしてとろりとした蜜が包み込んだ。
森閑とした辺りの空気に卑猥な水音が響き渡り、そこに彼女の荒くなった息遣いが重なる。腰が引けても逃れられる範囲はたかが知れており、蛮骨の指が執拗に追いかけて浅瀬に沈むたびにびくびくと内腿が痙攣する。
絶え間なく小さな悲鳴を発し続ける彼女へそっと囁いてやる。
「誰か通りかかってこの光景見たら、どう思うだろうな」
「や…だ」
「上も下も丸出しにして男の上で腰振って、大層ふしだらな女に見えるだろうよ」
胸の突起をくにくにと甘噛みし、蜜壺の口をほぐすように指をうごめかす。
「良い奴なら、助けてくれるかもしれねえぞ? 逆に自分も混ぜてくれって頼んで来るかもしれんが。一か八か、思いっきり助けを呼んでみるのも手かもなぁ」
「ひ……ぁ……」
言葉でかごめを煽りながら、蛮骨は蜜園の様子に意識を傾けた。
ふるふると小刻みに震えるそこは外気に触れても渇く暇がないほど水気をはらみ、先ほどからぱたぱたと蛮骨の怒張の上に蜜の雨を降らせている。
細い腰は指から逃れようと前後左右へくねる一方で、無意識に好いところへ当たるよう導いているようにも見えた。
嗜虐しぎゃくの笑みを噛み殺し、何とはない表情で、自分より高い位置にあったはずの――今はそうではない――かごめの耳元にささやく。
「どうした? 腰が下がってきてるぞ」
間近で囁かれた声にはっとしたかごめが意識を向けると、秘唇と亀頭とがぴたりと密着していた。短く鋭い悲鳴が上がり、膝へ懸命に力を込めて身体を浮かせると、離れた両者の間につぅと透明な糸が引いた。
「っ……」
かごめの顔が青ざめる。
勝負のかなめとなる部分に注力する余裕を失っていたのだ。
蝋燭を確認すると、さらに半分を切っていた。これ以上は蛮骨に何をされようとも、蝋燭が尽きるまで意地でもしゃがんだ状態を維持しなければ。
しかしそう思っている間にも蛮骨が胸と陰部への刺激をおこたることはなく、くちゅくちゅと発される淫猥な音が思考の際から侵食して、目の前をぐらつかせる。
我知らず呼吸が荒くなり、眩暈めまいを覚えたかごめは汗の滲んだ額を蛮骨の肩口に押し付けた。
足腰の負担を少しでも和らげるには前傾姿勢になるしかない。しかし、そうすると必然的に蛮骨へ身を寄せて彼の胸板に剥き出しの乳頭を擦り付けることになる。耐えがたいほど屈辱的な姿勢だが、勝負に勝つため背に腹は代えられない。
大丈夫。蝋燭は四分の一も残っていない。ここまできたのだから耐えられるはずだ。
そう言い聞かせ続けても、すでに限界を迎えている膝は再びがくがくと震え出し、腰はゆっくりと下降していく。
秘唇から溢れた蜜液が、またもやぴたりと密接してしまった亀頭から幹を伝い、とろとろと滴り落ちる。
唇を噛みしめ耐えているかごめの急所を休まず責め立てながら、蛮骨は軽い調子で言った。
「この分だと勝敗は五分五分だなぁ。はは、どうしても前が嫌なら尻の穴で受け止めても良いんだぞ?」
腰から臀部にかけての滑らかな曲線を撫でられて、かごめの揺れる瞳がみはられた。
そこに挿れる、という方法自体が想像外で、頭の中がしばし混乱する。
それをしたらどうなるのか、前に挿れるのとどっちが痛いのか。断片的な疑問が次々に浮かんでくるが、考える余裕など僅かも残されておらず、思料は袋小路に陥ったまま与えられる刺激によって中断させられる。
ずり落ちていく身体を何とか持ち上げようと蛮骨の首に回している腕に力を入れ、頭を押し付ける。
肩で息をするかごめの様子を面白げに眺めていた蛮骨は、ふいに彼女の後頭部へ手をかけると、己の方へ引き寄せた。
「んんぅっ!」
二人の唇が重なった。
かごめの大きく見開かれた瞳が動揺で激しく震え、離れようと渾身の力で動いた。絡みつく舌に噛み付こうとするが、察したように顎を固定され、無理やり開かれた口内を満遍なく舐め回される。
「ふっ…んん…!」
口を塞がれたまま、陰核が指先で弾かれた。そちらに反応すると乳房を責め立てられ、その間も口内は蹂躙され続け。
多方面からの刺激に頭の中が麻痺していく。
ほとんど蛮骨の肩にしがみつくようにして、涙でぼやけた視線を必死に蝋燭へ向ける。
あと、わずか。ほんのわずか。なのに。
もう体勢を支えていられない。膝が砕けそうだ。
少しずつ、着実に。肉襞が屹立を呑み込もうと密着を強めていく。
「やだ、やだあぁ……」
貪られる吐息の隙間で嗚咽おえつし、嫌だ嫌だと繰り返す。
蝋燭は。蝋燭、は。
赤く充血してしまっている陰核を執拗に指弾され、転がされたり押し潰されたりを繰り返して嬲り立てられる。
「ひっ、うぅっ!」
思考はぐちゃぐちゃで、自分が今どんな声を発しているのかも、何を見ているのかも、もうわからない。
前触れなく、尻や胸をまさぐっていた蛮骨の左手がかごめの背に回った。
そして、背筋から腰元にかけてをするりとひと撫でした。
「あっ……」
ただそれだけ。それがとどめだった。
かごめが仰け反って大げさなほどに一度、二度と震えると、まるで示し合わせていたかのように、その身体がかくんと沈んだ。
愛撫でほぐれきった花弁が落下点にある亀頭を包み込み、ぺたんと地に付いた膝に合わせて落ちた身体が、彼女の愛液を大量にまとわせて天を向いた肉棒をずぶずぶと呑み込んでいく。
これまでの努力に全く見合わないほど、崩落の瞬間はあっけないものだった。
ましてやその瞬間にせめて軌道を後孔に逸らす事など、これが初めての交接となる少女には、とてもできる芸当ではなかった。
「へえ、こっち食わせてくれるのか。じゃあ有難く」
そんな蛮骨の声が、どこか遠くから聞こえてくる。
状況が理解できないまま茫然と蝋燭を見ると、岩肌にできた焦げ跡の上で弱々しく揺らめいていた炎が、静かに燃え尽きて煙となった。
「消、え……」
「ああ。今、な」
まあこんなものさと、同じ光景を見ていた蛮骨が耳元で笑う。あと十数秒頑張ればお前の勝ちだったのにな、と。
みるみるうちにかごめの瞳がひび割れた。
現実を認識した次の瞬間、下腹から強烈な痛みと異物感が襲い掛かった。
「やだ! 嫌あぁっ!!」
かごめは絶叫すると、足を地面につき直し、蛮骨の首からぶら下がっている腕へなけなしの力を込めた。身体がぐっと持ち上がって、まだ半分も呑み込まれていなかった肉棒が雁首まで抜けかかり、最後の一踏ん張りに全力を投じる。
だが次の瞬間、
「話が違うだろ」
静かにそう言った蛮骨の両手が軽くかごめの細い腰を捉え、勢いよく下へ叩き下ろした。
「ぁっ――」
一瞬にして肉棒の全容が根元までかごめの中に埋まり、凄まじい圧迫感で下腹が満たされる。
ひゅっと息が漏れ、身体を縦に貫く衝撃が脳天まで駆け抜けた。
「あああああっ!!」
「負けは負けだ。もういい加減、大人しく股開け」
座位のままかごめの腰をさらに押し付けて自身を深く捻じ込み、蛮骨はその締め付けに歪んだ笑みを滲ませる。
長らくお預けを食っていた肉棒は蓄積された期待にこれ以上ないほど大きく膨れ上がっており、潤沢に濡れてはいるが未開であることは疑いようのない膣内をめりめりと音を立ててこじ開ける。
「これだこれ。今まで我慢してやったんだ、全部しぼり取ってもらうまで終わらねえからな」
痙攣を伴う引きちぎらんばかりの締め付けを十分に堪能した後、蛮骨は小刻みに腰を動かし始めた。
「いっ、うごか…なっ……」
一定の律動で子宮口を叩かれたかと思えば円を描くように掻き回され、不規則な間隔で下から勢いよく突き上げられる。膣壁をえらの張った雁首がごりごりと擦り上げるたび、視界に激しく火花が爆ぜて痛みが突き抜ける。
ただひたすら蛮骨の動きに合わせて揺さぶられながら、かごめにはぼんやりとした確信があった。
きっと、わざとなのだ。性的な刺激に不慣れなかごめを敗北させようと思えばすぐにできた。それをわざわざ、蝋燭が燃え尽きる寸前まで待っていた。
最初の勝負も二度目の勝負も、かごめの勝ちは万に一つも無いと承知の上で、その反応を楽しむために持ち掛けただけ。
こんなことならば勝負など受けずにあのままなぶられていた方が、もっと早く苦痛を終えられていたかもしれないのに。いらぬ恥を重ねずに済んだかもしれないのに。
「酷…いぃ……っ」
「今わかったのか?」
消え入りそうな呟きを聞き留めた蛮骨が、嘲笑うように答える。そうだこの男は、蝋燭の火が今にも尽きそうな間際にだって少しも焦っていなかった。
蛮骨の腕がかごめの華奢きゃしゃな身体を抱きすくめ、最奥に亀頭を押し付けてぐりぐりと突き抉る。腹の中まで犯されているような感覚が押し寄せ、全身がびくびくと痙攣する。
痛みでかごめが悲鳴を上げる中、一方的に腰を動かしていた蛮骨の動きがしばし静止した。
どう藻掻こうとびくともしない蛮骨の腕の中、かごめは生まれて初めて、己の中で熱いものが弾けて胎の底に注ぎ込んでくる感覚を味わった。
「あ……あ……」
体内で蛮骨の屹立が幾度か脈動し、放出の終わりを待ってずるりと引き抜かれる。少しの間を置いて狭い入り口から白濁がごぽりと溢れ出てきたのを感じて、かごめは愕然とした。
「いっ――嫌ぁぁぁ!!」
腕の輪から頭を抜いた蛮骨を突き飛ばして足の間を恐る恐る覗き込むと、破瓜はかの鮮血を交えた白い液が草の上に小さな水溜りを作っていた。
「どっ、どうすれば……」
蒼白になって、教科書を流し読みしただけの乏しい知識を必死に掘り起こす。ひとまず一刻も早く掻き出さなければと考え、そこに縛られたままの手を持っていこうとすると、蛮骨がぐいと帯を引いてそれをさえぎった。
「やっ…」
肩を押されて後方に倒れ込んだかごめの上に蛮骨が覆い被さる。
肩から着物がずり落ち、肘の辺りに引っかかって一切の無駄がない体躯を垣間見せていた。
長めの前髪がかごめの顔に影を落としたかと思われた刹那、顎を押さえられ、またもや唇を塞がれる。
「んーっ!!」
足をばたつかせようとするが、蛮骨の両膝に大きく割り開かれ阻まれた。早くも二戦目を渇望する屹立が肉襞に擦り付けられる。
悲鳴を上げて押し戻そうとしても、全く応えた様子が無い。
「も、もう終わって……! 出したんだから…も、いっ…、でしょ…!」
しゃくり上げながら懇願するが、蛮骨は薄く汗ばんだ顔に貼りつく髪を掻き上げ薄く笑った。
「あれだけ焦らしといて一回で終われたぁ、随分と酷な話じゃねえか。こちとら討伐隊に追われてた時から、ろくに吐き出せてねえんだよ」
言い終わらぬ内に今度は真上から貫かれ、かごめの背が仰け反って双眸が見開かれる。蛮骨が奥へ進むのと引き換えに、一度目に出された白濁が押し出されて溢れてくる。
自由に動ける体位になったことで、蛮骨はこれまで以上に荒々しく腰を振り立てた。
奥深くまで到達すると入り口まで引き戻し、浅瀬をかき回したかと思えば気まぐれに勢いをつけて深部へ掘り進む。
予測できない動きにかごめは翻弄され、蛮骨に抱え込まれた両足の先はぴんと張って律動に合わせ跳ね上がる。
痛みと全身を震撼させる衝撃で声にならない悲鳴を上げ続け、「許して」と「助けて」をうわ言のように繰り返すことしかできなくなった彼女を、蛮骨はうっそりと笑んだ顔で覗き込む。
「本当にやれるだけの事をやったか? この首から四魂の欠片を抜き取れば終わる話じゃねえのか?」
「っ……、ぅ……!」
涙の滴を散らしながら草の上で揺さぶられていたかごめの目元がじわじわと歪む。可憐な相貌に、似つかわしくない憎悪の色が滲んでいく。
一括りになったかごめの両手が伸びて、蛮骨の首にかかった。怒りと悔しさできつく吊り上がった双眸が次々と涙を零しながらも蛮骨を睨みつけ、喉の上にある親指に力を籠める。
蛮骨は面白げに目を細めた。
口を開けば百も千も罵詈雑言が飛び出しそうな憎悪をみなぎらせておきながら、指先にはまだ迷いがあるのだ。こんな仕打ちを受けているにも関わらず死人の身体から欠片を奪うことに躊躇ちゅうちょしているなど、蛮骨にしてみればひどく滑稽だった。
覚悟を決めたようにかごめが唇を噛みしめ、爪が肌に食い込む。
次の瞬間、蛮骨は抜けるぎりぎりまで引いていた肉棒を、唐突に最奥へ叩き込んだ。
「か…っ」
体重をかけた、楔を打ち込むような衝撃。彼女の身体が軋んで悲鳴を上げていることなど一切気にかけない、容赦のない叩き込み。
少女にとってこれが初めての性交だと知っていながら、それがどうしたと言わんばかりの、鬼のような責め立てだった。
「ああっ、あああっ!」
奥まで突き込んでは戻し、間髪入れずにまた膣内をこじ開けながら最奥の壁へ打ち込む。一人の男も知らなかった彼女のそこが己の形を忘れられなくなるほど、何遍も、何十遍も繰り返す。
「うっ…うっ……」
かごめは歯を食いしばり、縛られた両手を目元に押し付けて泣きわめいた。蛮骨の愛撫を拒絶しようと身体をよじるたび、腕から伸びる紅い帯が肢体へと複雑に絡みついていく。
それはさながら、真っ赤な蟒蛇うわばみに締め付け囚われているかのようで。
人里から目と鼻の先にある長閑のどかな森の中で繰り広げられる非日常的な光景を見ているのが己ただ一人だと思うと、蛮骨のたかぶりは否応にも増した。
そのまま二度目の吐精を受けたかごめは、肉棒が抜かれるや渾身の力で身体を反転させ、腹這いになって逃げようとした。
腰が抜けた家守やもりのような無様な動きだったが、藁にもすがる思いで草を握りしめ、顔を土で汚しながら前進する。
だが、決死の思いで進んだ距離は蛮骨の数歩にも及ばず、簡単に引きずり戻されて腰をぐいと上方へ持ち上げられた。
「やだっ、やだぁっ! 放して!」
尻を高く掲げ頭は地面に伏した体勢で、これまで触れられることすらなかった後ろの穴に一物がぐりぐりと押し付けられる。
「そこだめ! 挿入はいるわけない! もう逃げないから許――!」
ずぱんっ、と遠慮のない音とともに少女の悲痛な絶叫が森を突き抜ける。前も後ろも蛮骨に暴かれ、彼の証を深く刻み込まれていく。
獣のような突き込みで汗の珠が散り、肌のぶつかる音と水の響きがやけに静まり返った森の中で幾重にも反響する。
いつの間にか戒めが解けた両手からは上衣が取り払われ、わずかも隠せる部分が無くなった身体中を両手と唇が這いまわった。
「ああああっ!」
足に履いていた靴は度重なる体位の変遷の中でどこかにいってしまった。今や彼女が身に付けることを許されているものといえば、土がついて薄汚れた脱げかけの白い靴下と、肢体に巻き付く蟒蛇のような赤帯だけだった。

 

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