「良いものがあるな」
奈落が屈んで拾い上げたものを認め、蛮骨は瞠目した。
蛇骨のかんざしだった。
大振りな玉飾りには蝶の模様があしらわれ、太めな木軸の数か所に、戦いの最中で外れにくいようにと彼自ら彫り込んだ返しがある。
蛇骨が特に気に入って最期の時まで身に付けていた品だ。
弟分の遺品がこの男の手にあることに激しい憤りが湧き上がり、蛮骨は奈落に怒号した。
「それに触るな…!」
だが奈落は意に介さず、簪を片手に蛮骨のもとへ歩み寄った。
そして唐突に、空いている手で上向いた肉塊を鷲掴む。初めてそこへしっかりと触れてきた指はひどく冷たく、急所を握られた本能的な危機感と相まって大げさなほどに肩が跳ねた。
してやろう」
「な……」
細い指が亀頭の両縁を押さえて、中央の鈴口を左右に割った。散々にしゃぶり尽くされてきたそこは、痛ましいほどに赤く腫れてひくひくと細かな開閉を見せている。
奈落はしばらくその様子を観察していたが、やがて簪の尖った先端を鈴口のごく小さな穴に向けた。
まさか。
蛮骨が目元を引きつらせる。
「やめっ――」
叫びかけた瞬間、簪の軸が尿道に突き立てられた。
絶叫が塚の底に響き渡る。
信じられない思いでそこを凝視すると、鈴口の径よりはるかに太い簪の軸が容赦なく尿道を押し広げ、深々と捻じ込まれていた。
「あ…あ……」
目の前の光景に言葉を失うが、すぐにそれどころではなくなった。
あまりの痛みに仰け反り、生理的な涙が目尻を流れ落ちていく。
「抜…いっ……うぁあっ!」
「この程度で気を飛ばすな」
奈落が簪の玉飾りに手をかけ、好き勝手に前後左右へ揺さぶる。その動きに合わせて肉棒もまた振り回される。
「――っ!――ぃっ!!」
獣のような唸りが、がちがちと鳴る歯列の隙間からほとばしった。
「動くと余計に深く刺さるぞ。わしは構わぬがな」
そう言う奈落の指が、奥まで到達した簪を今度はゆっくりと尿道から引き抜き始める。
軸に施された返しが内部に引っかかり、さらに、長らく打ち捨てられていたことでざらざらと劣化した表面が、尿道を容赦なく傷つけていく。
髪を振り乱して叫ぶ蛮骨を意に介すこともなく、中途半端に引き抜いては、いたずらに奥へ押し戻すことを繰り返した。
「ぃぐっ……あがぁぁっ…!」
全身から冷や汗が吹き出し、拘束する触手を引きちぎらんばかりに、四肢に力がこもる。
長い時間をかけ、ついに簪の先端まで完全に抜け切るかと思われた刹那、勢いをつけて再び根元まで貫かれた。
「――!!」
びくん、と大腿が持ち上がり、ほとんど反射的に精が放たれた。
尿道をぎちぎちに塞がれているためその殆どは外に出ることが叶わず、ほんの数滴がぶしっと噴き出して鈴口から生える玉飾りを汚す。残りは根元を逆流し、出口を探すように狭小な管内で暴れまわった。
尋常ではない痛みが股間から全身を突き抜け、目の前が真っ白になる。
「ぁ……か……」
唇が戦慄き、意思と無関無しにぼろぼろと涙が溢れ出した。
そもそも何かを受け入れるようにはできていないそこを、異物に容赦なく穿ほじくり返される。
閉じかける膝は触手に左右から大股に開かされ、簪を埋め込まれた屹立をより曝け出された。
孔の縁から透明な涙を滂沱する肉の柱へ奈落は一切の躊躇いなく簪を前後させ、時折回転を加えては、蛮骨の腰を跳ねさせた。
これ以上奥へ進めない箇所まで行き進むと、掘削するようにつついてその先を無理にこじ開けようと試みる。その度に耐えがたい痛みが蛮骨を苛んだ。
「やっ…やめっ……壊れ…るっ…!」
無理のある抽送で尿道は無惨に傷付けられていくが、やはり欠片の力によって細かな傷は瞬く間に回復させられ、間髪入れず再び痛めつけられる。
地獄のような苦痛が延々と繰り返された。
傷は癒えても痛みは変わらない。そこの機能を根こそぎ破壊されそうな激痛に意識を飛ばすことすら許されず、蛮骨は自分がどんな言葉を叫んでいるのかも分からないまま、ひたすらに手足の触手をぎしぎしと軋ませながら中空でのたうち続けた。

 

一条の光も差さない塚の底では、どれほどの時が経過したのかを知る術はない。
永遠に続くかと思われた尿道への責め苦が終わりを迎えたのは、前触れもなく突然の事だった。
奈落が思い出したように簪を抜き放つのと同時に、道を塞がれ堰き止められていた迸りが待ちわびたかのごとく開いた道に流れ込む。
「ふっ……」
下半身の筋力が麻痺したことで噴き出すほどの勢いを得られず、精濁した流れは一筋の滝のようにだばだばと飛沫を上げて地面に滴り落ちた。
液体が通過する感触だけで、何度も意識を飛ばしかける。
大量の汗が光る蛮骨の総身は、しばしの間がくがくと弛緩し続け、やがて今まで絶え間なく暴れていたのが嘘のように、触手に吊られたまま動かなくなった。
涙で濡れた虚ろな目をした彼の前に、奈落は簪を近づけた。
今し方まで尿道を犯していた木製の軸は濡れそぼり、玉飾りの付いたぎりぎりの部分まで尿道に埋まっていたことを如実に示している。所々にできた赤黒い染みが、内部を相当に傷つけたのだと物語っていた。
おそらくすぐに欠片の力で回復するのだろうが、焼け爛れるような痛みで、下半身は全く力が入らなくなっていた。
「欠片を用いた身ならば、無理も通ることがわかっただろう」
蛮骨に絶え間なく責め苦を与えながらも、奈落には一切、興奮や欲情といった感情が見えない。
ただ作業的に、実験を施してはその成果を確認するような態度だった。
言葉を返す気力も無くなり項垂れている蛮骨に、奈落はつまらなそうな目をすると傍らの触手を持ち上げた。
そこに乗せられているのは、三つ目のされこうべだった。
擦り切れた尿道を通ってきたと思しき赤みを帯びた白液に塗れ、こちらを空洞の瞳が見据えている。先ほどの吐精を浴びせられたのだろう。
「……」
瞬きも忘れてその空洞を見ていた蛮骨の目から、新たな涙が一筋伝い落ちた。
「ごめん、な……」
消え入りそうな声を聞き咎め、奈落は初めてその面に明瞭な感情を――実に不快げな色を滲ませた。
「どうやら、肉体への苦痛よりも仲間への侮辱の方が堪えるようだ」
奈落の周囲に触手が持ち上がった。その先端にはそれぞれ、そこらから無作為に拾われた大小様々な形状の骨が巻き取られている。
「っ……」
何をされるかを察し、蛮骨の顔から血の気が引く。
「てめ…、いい加減、に……」
憎悪の言葉を吐こうとした瞬間、何も持たない触手が二本伸びてきて、開かれた足の中心にある孔の淵へ先をかけ、さらに左右へ広げた。
もともと小さなすぼまりでしかない秘孔が無理に引き伸ばされ、内部への狭い道が奈落の眼前に開かれる。
屈辱的な体勢に慣れることはなく、蛮骨は血が滲むほど唇を噛んだ。
割れ目を暴かれ、無様を強いられる中、せめてもの抵抗のようにひくつく秘孔。
中を蹂躙した触手が分泌していった粘液が垂れ落ちるそこへ、骨を掴んだ触手の一本が狙いを定めた。
目を見開き、なけなしの力を絞って、必死で身体を揺らす。
「やっ、やめろ! やめ──っ」
制止の声は途切れた。誰の、どこの骨かは定かでないが、かなりの大きさを備えた一本が無情にも勢いをつけて孔の中へ突き込まれた。
「ぐぅっ!」
身体を折って何とか見下ろすと、くたりと倒れた肉茎の向こうに、己の尻から突き出ている白い骨の先端が見えた。
「抜け! こんな…!」
血を吐くような懇願も虚しく、突き入れられた骨のわずかな隙間から、さらに小振りの骨が二本、三本と追加されていく。
入口が裂けんばかりに軋んだ悲鳴を上げるのもいとわず、それぞれを掴んだ触手がばらばらに動き出し、骨たちは蛮骨の内部で乱暴に暴れ回った。
「ひっ……あぁあっ!」
形状や反りの異なる骨が予測不能な動きを繰り返し、一つ一つが異なる箇所を叩いては、縦横無尽にかき回す。
「やだ……嫌、だ……!」
拒絶するように頭を振ると、汗と涙が周囲を埋め尽くす触手に飛び散った。
やめろ。あいつらの骨を、こんな風に扱うな。
事が終わった後、奈落が約束通り人数分の欠片を寄越したとして。
彼らを蘇えらせ――その後、どんな顔をして会えというのだ。
勝手な都合で呼び起こされて、意味のわからない理屈で一方的に身体を好きにされて。
七人でまたあの頃のようにできたら良いと、ただ、そう思っただけなのに。
どうして。どうして俺がこんな目に。
様々な感情が洪水のごとく入り乱れ、嗚咽のような声となって漏れ出ていく。
内部を犯す骨は粘液や体液にまみれて抜き去られ、わずかでも空間が生じるとすぐさま別の骨が突き込まれる。
後孔内は常にぎちぎちに埋められ、もはや何本の骨が入っているのかも定かではない。
「か、はっ……」
身体が反応を示す箇所を見つけると、執拗にそこばかり抉られた。
揺さぶられる意識の中、涼しい顔をしてこちらを見ている奈落を、涙の滲む激しい眼光で睥睨する。
それでも続けざまに前立腺を叩かれ続けると、意思と裏腹に回復しつつある肉茎が懲りずに頭をもたげ始めてしまうのだった。
「ほう、仲間の骨に尻を犯されて感じるとは」
「ち……ちが、う……」
確実な角度を見せる砲身に、筒型触手がばくりと喰いついた。内部の突起を激しく振動させ、先端から根元まで余さず蹂躙する。
奥の菊花が亀頭を舐めしゃぶり、先より開いている尿道にまで舌を伸ばしてくる。
脳内で爆ぜた火花が視界を埋め尽くした。
「そ、れ…! いっ、あぁ――っ!!」
前後からの衝撃が背筋を這い上り、全身を痺れとなって駆け巡った。
たまらず新たに精巣を飛び出した白液が体外へ放出されるが、熱の怒涛を受けてもなお、触手は離れることなく貪り続ける。
達した直後の敏感な一物を荒々しく刺激され身をよじるが、その動きで後孔の骨に直腸を抉られ、瞼の裏でばちばちと閃光が弾けた。
「ううっ……ううぅ!」
どこにも焦点を合わせることができない視界の中に、その時光るものが入り込んだ。
引き寄せられるようにそちらを見ると、地面に突き立っている蛇骨刀が刀身に仄明かりを反射して、蛮骨の姿を鏡のように映し出していた。
両膝を水平に固定されて形の異なる骨を幾本も尻から生やし、肉茎は触手に貪られ、腰を別の生き物のように跳ねさせ。汗と粘液と白い液体が全身を伝い落ちていく。
ありありと映し出された痴態は、現実とは信じがたいほど情けないものだった。
蛮骨が見ているものに気付いた奈落が、目をすがめて口端を吊り上げる。
「誰か蘇らせてやろうか」
その言葉に蛮骨が青ざめる。
「だめ……だめだ……今はっ……」
こんな姿を見られたくない。
「なぜだ? 仲間たちを蘇らせるために、このような行為に甘んじているのだろう。叶えてやると言っているのだぞ」
「だめだって…言って…だろ…!」
触手の動きに苦しみながらも頑なに頭を振る蛮骨に、奈落はうっそりとわらった。
「これを見てもまだ、首領としての沽券を保とうと思えるのなら、とんだ笑いぐさだ」
奈落の言葉に顔を上げた蛮骨の瞳がひび割れた。
いつの間にか目の前に六つの髑髏が並べられていた。
そしてその全てが、白濁した液体で汚されている。
「あ…い、いつ……」
覚えがあるのは三つ目までだ。以降は、どこで髑髏が据えられたのか、わからない。
否、認識する余裕も無いほど、狂わされていた。
汚してしまった。己の汚濁で、仲間たちの頭蓋も身体も、汚されてしまった。
六つのされこうべ。首から上が、六つ。
あの雪山の情景が鮮明に蘇る。
「あ…、あ…あ……」
死の直前。瞼に焼き付いた光景。
わなわなと瞳が揺れる。身体中の熱がざっと引いていく。
蒼白になった蛮骨の意識を、肉棒に喰いついた触手と後ろに捻じ込まれた骨たちが無理やり引きずり戻した。
「っ――」
消えかけていた熱が再び火種を投下される。
止めたくても止まらない疼きが、何度でも身を起こしてしまう。

 

そこから先は、されるがままだった。
何をどうされているか、理解が追い付かなくなった。
襲い来る責め苦に抗するすべもなく身を震わせ、声を漏らし、おびただしい量の精を放った。
作られる精の供給が間に合わなくなると、なけなしの水分をかき集めたように潮が噴き出し始め。それすら尽きると、ただただ、感覚だけで幾度も果てた。
どれだけの時が経ち、どれだけの苦痛を受けたかわからない。
ただ、ずっと。身体以上に悲鳴を上げている胸の奥を、一つの思いが支配していた。

――このままでは。
――このままでは。

このままでは、また、お前らを――。

もはや幾度目になるかも分からない絶頂を強制された直後、蛮骨の思考はふつりと灼き切れた。

 

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